『遊星からの物体X』

『遊星からの物体X』は、超有名なSFホラー映画である。(米・ジョン・カーペンター監督)

”超有名”と言っても、たぶんホラー・ファンの間でだけなんだが、、。

製作は1982年。同系のSFホラー『エイリアン』が世界的大ヒットした3年後に発表された。

映画のストーリー自体は既に1938年にあって、『エイリアン』の成功でようやく制作会社が重い腰を上げたという事らしい。

(当初は、1951年に公開された『遊星よりの物体X』のリメイク企画だった。)

 


『エイリアン』も無気味で怖い映画だったが、『遊星からの物体X』はその数倍、恐ろしかった。

初めて観た時は、『エクソシスト』を観た時と同じ様な感動(?)でいっぱいになって、ジョン・カーペンター監督はなんて素晴らしい監督なんだ!心理的恐怖も気味の悪い特撮もめっちゃめちゃ素晴らし過ぎる!と、とにかくマジで驚いた。

 

その頃の私といえば、ビデオ屋さんに行くと、堂々と並ぶアカデミー賞作品には目もくれず、お店の奥の方にある”ホラー/SF/サスペンス”の狭くるしいコーナーをうろうろして、聞いたこともない怖そうな映画のタイトルを見ては一人ワクワクしていた。『呪いの〇〇』とか『悪霊の〇〇』とか『恐怖の〇〇』とか、、。

インターネットが無い時代で、TVで宣伝するような映画は大体が健全な感動大作、有名スター主演の恋愛ものとかコメディで、ホラー映画は間違いなくB級扱い、マニアの間で情報が交換されるだけのオタク向けだった。

だからこそ、傑作に出会った時には、制作スタッフに敬意を込めて”万歳三唱”した。

でも今回は、『遊星からの物体X』がいかに優れたホラー映画かを述べるのが目的ではない。

この映画のビデオに纏わるちょっとした思い出が、私にとってなかなか忘れられないものだった。思い出と言っても何かが起きた訳では無い、何も起きなかったことが悲しい思い出なのだ。

 

当時、新潟の実家に帰省するのはお盆やお正月だけだったが、父の手料理や母とのお喋りを楽しみにしていた。

東京で『遊星からの物体X』に大感激した私は、これは是非とも両親に見せてあげなければ、と激しく思った。

もうこの時点で、これを読んでいる人には結末が見えたと思うが、、。

 

「ほんとすっごい映画なんだよ!絶対、絶対、びっくりするよ!」勢い込んで借りてきたビデオをセットした。

「へぇ、、。」父も母もそれなりに期待感をにじませている。

『遊星からの物体X』ホーム鑑賞会、スタート!

 

1時間49分、私は言葉もなく食い入るように最後まで見終わった。ふ~、やっぱり何回見ても凄いわ~、、。

そして、私としてはかなり控えめなドヤ顔で二人の方を振り返った。

 

「なんだ、これ?」父、もの凄く不機嫌。

「つまんない、、。」母、半分寝てる、、。

…..。」

以上、鑑賞会終了。

 

高校生の時のポワロ体験と、20代での『遊星からの物体X』体験。この二つは、私にとって”若き日のトラウマ事件”だ。

(*ポワロ体験については、2012628日『好きなもの』記事内で書いています。)

 

例えば、美味しかったレストラン、面白かったドラマ、好きな作家やミュージシャン、人それぞれ好みやこだわりは違うから自分と違う感想があって当然だ。

音楽を仕事にしていたら、自分が一番大切に思う感性にだって容赦ない批判は飛んでくる。

そんな事でいちいち傷付いていたら命がいくつあっても足りない。

そういうものに負けない耐性は、私は生来とても強いと思うのだ。

 

この二つの体験は、そういう趣味や好みの問題とは違う。もっと心の中のものだ。

何時間も迷いあぐねてようやく決めて買ったお土産の品、きっとめっちゃ喜んでくれるだろうその笑顔まで想像して渡したお土産の品を、相手が全く喜んでいないのを知った時の感じに似ている。

自分にとって最高に素敵だと思っていたものが、一瞬にして無価値になる、誰かが評価を下して最上だったものが最低なものに成り果てる、あんなにピカピカ輝いていたのに突然光を失ってしまう 、、その残酷な瞬間をまざまざと見て心が悲鳴をあげた、そんなことだったんだろうと思う。

 

当時はそんな分析めいた事を思うでもなく、ただがっかりして悲しかったが、このブログを書く事で、ポワロも、そして『遊星からの物体X』も、その価値や本質は何一つ変わっていない、相変わらず私にとってピカピカ光り輝く宝石だという事に気付いた。

それが本当に嬉しい。

 

たまたま、ある動画サイトで『遊星からの物体X ファーストコンタクト』というスピンオフ作品を見つけて、この20代の頃の出来事を思い出した。

相変わらずこのジャンルのファンは少数派だろうが、誰かの意見や世間一般の評価にめげることなく、公正な”いちホラー・ファン”としてこれからも元気に歩んでいこう!と、決意を新たにした(笑)。

 

今現在、絶対に見たいホラーは『ヘレディタリー/継承』。

”現代ホラーの頂点”というシビれるキャッチコピーがとても良い。

期待値99.9%だ。

 

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コメント: 10
  • #1

    ぅぉ (木曜日, 11 4月 2019 10:53)

    ほう、田崎さん、物体Xいける口でしたか。
    私は大人になってから、まだビデオが現役だった頃レンタルして見ました。
    怖くて結末覚えてませんw 何かの機会にDVDレンタルして再チャレンジ
    しようと思うも、なかなかレンタルできてません。

    しかし、ご両親のリアクション目に浮かぶわぁ。
    一家団欒の場所で見る映画ではないような気がします。

  • #2

    michiko (木曜日, 11 4月 2019 19:33)

    確かに、一家団欒の場所で見てはいけない映画でした、、。感動のあまり我を忘れましたね(笑)。
    ぅぉさん、チェック済みだったってのがウケる、さすが同好の士です!






  • #3

    ぅぉ (金曜日, 12 4月 2019 08:09)

    SFの業界では物体Xは名作として評価されていたのではないかなぁ。
    私が知ったのは、パロディ要素の強いとあるマンガで、顔が四つに割れる犬が
    出てくるのですが、それを友人から、物体Xのパロディだよと教わって、何かの
    機会に見てみようとおもってました。

     寄生生物モノで言えば、入院前に、「ヴェノム」って言うマーベルコミックの実写版
    の映画を見ました。 寄生生物が出てくるので絵はグロかったですが、まぁ
    ヒーローモノなのであと味スッキリです。  これも一家団欒向きではないと思い
    ますが。   あと、「寄生獣」ってマンガ、これはアニメ化もされててそこそこ怖い
    あっ、確か実写版もあったかも。 実写版はどうだろうなぁー見てないけれど。

  • #4

    michiko (金曜日, 12 4月 2019 09:09)

    そうそう、ホラーで一括りにしちゃいましたが、SFとしても名作です。
    とにかく、そっち系で、ジョン・カーペンター監督はめちゃ尊敬されていると思います。
    ”お化け屋敷”的なレベルに陥らない矜持というか拘りというか、、。その線引きは人によって違うと思いますが。
    ぅぉさんは、寄生生物モノも詳しいのかぁ。昔の「The Body Snatchers」。白黒映画でしたが怖かった、、。

  • #5

    ぅぉ (金曜日, 12 4月 2019)

    いゃ、別に詳しい訳ではないですよ。
    知ってるものを上げただけです。「The Body Snatchers」は存じ上げません

  • #6

    ぅぉ (木曜日, 18 4月 2019 12:27)

    ヘレディタリー/継承 お勧めした責任もあるので、レンタルして見て
    みました。 私のホラーリテラシー?が低いせいか、今世紀最怖って
    いうほどでは無いように思いました。
    絵として怖い部分は多くありましたが。

    ついでに、クワイエット・プレイスも見てみました。 こっちはエイリアン的
    な怖さですね。 結構面白かったです。 ただ疑問点もあるので。
    ネタバレサイトでも見て勉強してみます。

  • #7

    ぅぉ (木曜日, 18 4月 2019 13:24)

    調べた結果
    クワイエット・プレイスはツッコミ所満載映画だったようです。w

  • #8

    michiko (土曜日, 20 4月 2019 11:53)

    ツッコミ所満載って、、。逆に見てみたい気になる、ビミョーな感想ですねぇ。
    スマホ失くす映画も見たいし、天皇陛下関連の映像もきっと凄いことになりそう。
    こりゃ連休は忙しくなるわぁ、、(笑)。

  • #9

    ぅぉ (日曜日, 21 4月 2019 12:11)

    楽しんでください。 ゴールデンウィークっというネーミングは確か、映画業界が
    お客様呼び込みの為に作った名前だと聞いたことがあります。 それに遅れると
    7月には「来る」がレンタル開始になります。
     これは、ホラーだからと言うより、松たかこさんと小松菜奈ちゃんのメイクっぷり
    っていうか化けっぷり(お化けと言う意味ではないですよ)が楽しみなんです。
    hpみると誰? って感じでした。

  • #10

    michiko (月曜日, 22 4月 2019 06:25)

    ほんとだ、だれ?って思った、、。