私は、ポワロが好きだけれど森鴎外も好きだ。
なぜ、まったく関係ないこの二人を持ち出してきたのか?
私がファンだと言う、ものすご~く個人的な共通点しかないのだが、ファンになった理由(わけ)ー『舞姫』が好き、探偵ものが好き、という表面的な理由じゃなくて、もう少し奥の方を探ってみようと思う。
何か面白いことを発見するかも、、。
この二人には、私が考えるに4つの類似点がある。
・めちゃめちゃ賢い
・自分の信じた事をとことん貫く
( 鷗外は、この点で世の非難を受ける事態にまで陥った。)
・言動に気品を感じる( ポワロは特にドラマ版。)
・時々お茶目である
こういう人物は、きっと誰もが好感を持つだろう。男性からも女性からも好かれるはずだ。
付け加えるなら、二人とも名声と財産を持っている。
鴎外はそういうものにあまり執着しなかったようだが、ポワロはとても気にしていた。
容貌については( 残念ながら… )、特にポワロはかなり微妙だ。
女性の多くは、所謂イケメンやお金持ちが好きだと思うが、私は正直どうでも良い。イケメンやお金持ちであってもなくても、殆ど関係無い。
、、いや、彼氏の話をする予定じゃないのだ。
話を先に進めると、この4つの類似点はどちらかと言うと一般的で、だからファンになるかと言えばそんな事はまずない。
他に何か、特別に素敵でとんでもない魅力があってはじめて、何十年越しのファンになるのだ。
そうは言っても、4つの類似点は押さえておくべき重要ポイントである。
特に、”めちゃめちゃ賢い”は外せない。
鷗外とポワロは、現実と虚構の世界で元々まったく違う立場の二人である。
それを無視して敢えて似た部分を探してみたが、次は相違点である。
最初から違う所だらけの中で、類似点と対極になりそうな決定的な相違点というのを考えてみた。
もちろん、人柄に関してである。他は次元が違いすぎて比べられない。
一番違うと思うのは、ポワロは稀に見る変人で、鴎外は生涯ごく普通の家庭人であろうとした。
ポワロの変人ぶりは度を超していて、几帳面さは病的、左右対称に異常にこだわり、完璧な服装・潔癖症的な習慣はちょっと嫌味なほどだ。
相棒ヘイスティングス大尉は、行動を共にしてさぞ大変だっただろう。
一方、鴎外はテーベス百門の大都(木下杢太郎)と言われるほどの知の巨人でありながら、良き夫、父親で妻や子たちから愛された。
稀代の変人・ポワロと偉大な常識人・鷗外。
なぜ私は、同じくらいの熱度でこの二人のファンなのか?( いや、並べること自体おかしいのだが、私の中で二人は永遠のアイドル(?)である。)
先に書いたように、彼らに「特別に素敵でとんでもない魅力があるから」なのは間違いない。それは何だろう?
鴎外は、高尚で孤高の精神を持ちながら、周囲の人たちにはとびきり愛情深い人であった。
明治という文化的大変革の時代に、日本の有り様(ありよう)について深く考え啓蒙し、知識層から大変に尊敬されたが、それだけではない。家族からの信頼がものすごかった。
彼の子供たちが全員、父親に自分がいかに愛されたかをそれぞれ著作に書いている。それは読んでいて感動するほどである。
一方、ポワロは、シャーロック・ホームズより洗練された推理方法で難事件を鮮やかに解決する。
悪いヤツは容赦しない。正義を追求する姿がほんとカッコいいのだが、惜しいことに超・変人である。
世間では”変人”というと強力なマイナスイメージなのだが、どうしたことか、世界中でたくさんの人がポワロのファンになった。
う~む…。ポワロの場合、この”変人”という要素が逆にポジティブに作用しているようだ。多くの人を惹きつけてやまないチャーミングポイントであるらしい。
正義の味方が変なヤツというのは、確かに微笑ましい。
さて、長々とまとまりなく書いてきたが、そろそろ考察の結論。
”愛情深い人”、”変な人”というのは、たぶん二次的なファクターである。
人が魅力的と感じる際の大事なキーだが、前提となるファクターとの絡み加減によってプラスにもマイナスにもなり得るので、決定打ではない。
その前提条件とは、”めちゃめちゃ賢い”ことだ。
想像を超えるくらい”賢い”ってのがまずあって、その上で人は興味を持って近づく。( あくまで個人の見解です…。)
頭脳明晰な事と愛情深い事は相反する印象がある。だから鴎外には意外性がある。
対して、変人である事は相似形で、「天才は変人」というのは世界の共通認識だ。だから、ポワロの変人ぶりは度を越せば越すほどチャーミングなのだ。
意外性と相似性。それぞれの妙味は、”歴史の偉人”と”物語のキャラクター”という違いを超えて、私の心をずっと掴んで離さない。
ファンの気持ちというのは、対象と空間/時間の距離があるほどに静かに長く続くものなのかもしれない。
( ん~。若干、無理矢理な気が、、。)
*******
どうも私は、”賢い”人が好きらしい。これは発見か(笑)?
知性に対する憧れと思われ、、。
かと言って、アインシュタインやスティーブ・ジョブズのファンにはならないんだけど。
ということで、次回は本題 ”ミステリーにおける『変人』の持つ意味” について考えてみたいと思います。
***Part10に続く***
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ぅぉ (日曜日, 27 1月 2019 19:10)
作家さんとキャラクターを同列に見るのは面白いですね。
「変人」の意味というのも面白そうです。
私、この土曜日にツタヤさんで「ミス・シャーロック」と言うドラマ(Hulul配信)がDVD
化されてて、レンタルしてきて一気見しました。 シャーロックを自称する
竹内結子さんが超絶、頭良いけれど、まさに変人
バディ役の貫地谷しほりさんの役名が「橘 和都」、わとさん と呼ばれてるw
刑部さんが 礼紋 元太郎 いゃいゃ、笑うしかないキャスト名ですが結構
面白かったですよ。
michiko (月曜日, 28 1月 2019 08:00)
ぅぉさん、相変わらずアンテナ張ってますねぇ^ ^
私も「ミス・シャーロック」はちょっと気になってました。
最近、いろいろ「読む」方に興味が行っていて、ドラマを「見る」余裕がなくなってますが、そのうちチェックしたいと思っておりますよ!
ぅぉ (月曜日, 28 1月 2019 22:03)
私は、ラジオ聴くのが忙しくって 積読本が増えてるw
まっち (日曜日, 03 2月 2019 09:51)
アガサ自身はポアロが大嫌いであるのに、何故か想定外のファンを得てしまった。彼女の空想の世界でもポアロは大暴れしたに違いない、とのことでした。
こうなると、実在の人間と変わりない、人格を持って勝手に動きだす。
アガサが、大嫌いなカエル野郎の変人ぶりを描けば描く程多くのファンを喜ばせてしまう。勿論、彼女と同じくポアロ大嫌い派もいることでしょうが。
ところで、シリーズもので物語中のキャストが想定外の人気を得てしまった場合、それに合わせてキャラ変更してしまう場合があります。
ポアロ・シリーズでは、そんなことは無いでしょうが、この奇行は又ファンを喜ばせるだろう等の想定は無かったのでしょうか?
読んだ事もドラマを見た事も無い人間が勝手な事を書いてすいません。
一方で、森鷗外ですが。
「頭脳明晰な事と愛情深い事は相反する」でしょうか?
儒教的道徳感を引き継いだ明治時代でも、ジェントルマンになるべく教育を行ったイートン・カレッジに於いても、良い人間となる為の教育という大義があり、これは今でも少しは残っているのだと思いたいです。
頭脳明晰な人と、よく勉強した人とは違うのかもしれませんが。
「頭脳明晰な事と愛情深い事は無関係」ぐらいじゃないでしょうか?
michiko (日曜日, 03 2月 2019 13:33)
マッチさん、ポワロの場合、奇行というのではないんです。彼の性格自体が”変わって”いるので、それは最初の設定からずっと変わりません。
だから、それに付き合うクリスティーがうんざりしちゃったかもです。
シリーズの途中でがっかりしたのは、『X-File』でモルダーとスカリーが恋仲になっちゃった展開かなぁ、、。
あれはまさしく、ファンの熱烈要望に負けちゃったんだと思います(笑)。
「頭脳明晰な事と愛情深い事は相反する」というのは、あくまでそういうイメージがある、印象がある、という事です。
私も、本当に賢い人はきちんとしていると思っています。
ただ、頭脳明晰=冷徹というイメージがあり、鴎外についてもそのような印象を持っている人が少なくないです。
文体があの文体ですから、隙のない冷たい人と思われてしまうのかもしれません。
本当の鴎外を誤解している人が多いと思います。
まっち (日曜日, 03 2月 2019 22:41)
ありがとうございます。
いつか時間が出来たら、どちらもじっくりと読んでみたいです。
まぁー「舞姫」は無理かな、漢字に弱いもんで。
michiko (月曜日, 04 2月 2019 07:13)
ポワロはドラマの方がオススメですよ!
まっち (火曜日, 05 2月 2019 00:49)
ポアロは物凄く大量のドラマ動画があるんですね。
私は、読むのが苦手なのでこちらの方が向いています。勿論日本語で。
ありがとうございました。