シャーロック・ホームズ -Part1-

先日、英国のメイ首相が日本を公式訪問した。

英国と日本の連携強化が進むらしい。

『祝・日英同盟(?)復活!』ということで、しばしイギリスについて考えてみた。

 

創元推理文庫で育った私にとって、イギリスと言えば、まず第一にシャーロック・ホームズである ^ ^ v

私の少女時代からの永遠のアイドル、名探偵エルキュール・ポワロはベルギー人だが、彼よりもっと有名で、100年以上にもわたって世界中で愛されている偉大なイギリス人探偵が、シャーロック・ホームズだ。

 

以前、英国製作のドキュメンタリー番組で見たのだが、現在、法医学-科学捜査関係で活躍する人たちの中には、小さい頃からホームズの大ファンで、彼に憧れてその職に就いた人たちがかなりいる。

 

大きな拡大鏡とピンセット、その他いろいろなアイテムを使って、現場に残る葉巻きの灰さえ見逃さず、証拠と論理的な推理をもって犯人を突き止めるというホームズ独特のスタイルは、現代の犯罪捜査の手法に繋がるのだそうだ。

 


コナン・ドイルがホームズシリーズを書いた時代は、19世紀後半。

同じ時期に、あの凄惨な”切り裂きジャック”事件がロンドンの街中で起きて、少なくとも5人の売春婦がむごたらしく殺害された。

犯人が捕まらないまま迷宮入りして、現在に至るまで謎の大事件として有名だ。

 

この時代の犯罪捜査は今のように科学的ではなく、犯行現場は野次馬や警官たちによってめちゃくちゃ荒らされるし、証拠を精査するという近代的手法も確立していなかったので、まずは疑わしい容疑者をかたっぱしから引っ張ってきて自白させる、みたいな時代だったらしい。

 


その頃、日本は明治時代。

正確には、”切り裂きジャック”事件が起きた1888年は日本で明治21年。

1883年に東京・麹町に鹿鳴館が完成して、極端な欧化政策で無理やりな西洋化が進んでいた。

 

ちょうど、江戸時代から明治時代へと移り変わる時代を舞台にした探偵小説に、岡本綺堂の『半七捕物帳』がある。(大正6年/連載開始)

目端の利く優秀な岡っ引き”半七"が活躍するが、犯人を挙げる時にはだいたい物的証拠より状況証拠が決め手になる。

「犯人はおめぇだな。どうだ、そうだろう。こうなったらしょうがねぇ、お上のお慈悲を乞え。」

「旦那、恐れ入りました、、。」

証拠を出せ〜っと居直るような犯人は、まず出てこない。

 

指紋や血痕判定、足跡や遺留物の保存などの法医学の基礎的概念は、イギリスではホームズの時代に広まった。

”切り裂きジャック”事件が、警察の杜撰な捜査のせいで迷宮入りした事への庶民の不満は、相当にひどかった。科学的な手法の導入は待った無しだったのだろう。

ホームズが、スコットランドヤードのレストレード警部に時おり浴びせる嫌味や警察組織への嘲笑には、そうした背景があったようだ。

 

現代では、DNA鑑定やプロファイリングなどの凄い技術があるから、犯人検挙率は100%に近いのか、と思うとそうでもない。(それでも、日本の凶悪犯の検挙率はめちゃ高いらしいが...。)

やはり最終的には、捜査する人たちの推理力や執念、洞察力や着眼力とか、そういう個人の力がものを言うのだなぁ、と思う。

科学という道具を使うのは、能力を持つ人間なのだ。

 

その先駆けがシャーロック・ホームズだった。

作品中で、彼が独自に駆使する化学の知識や足跡・血液の分析、行動観察の方法などは、そっくり今の科学捜査に受け継がれている。

 

コナン・ドイルの原作に一番近く、ホームズ史上最高と評価されている故ジェレミー・ブレッドの演じたシャーロック・ホームズ。

陰鬱で皮肉屋の表の顔と、お茶目ないたずら坊主のような隠れた顔。

時折り常軌を逸するあぶない精神と剃刀のように鋭い論理的思考。


きっと、シャーロック・ホームズはこういう人だったんだ、、うん、そうに違いないと、世界中のみんなが納得した。

 

*ジェレミー・ブレッド

『グラナダテレビの5シーズンにわたるシリーズに主演した。

その姿はシドニー・パジェットが描いた挿絵から抜き出て来た程とまで言われ、奇抜かつ繊細な演技でホームズを演じた。

、、全集を完成する前に心臓病のため短編集を含む18作品を残して他界した。本作は2013年現在でも人気が衰える事がなく、NHKだけでなくCATVのチャンネルでも数多く再放送されており、いまだ多くの人々に愛されている。、』

(wikipediaより)

 

***Part2に続く***