(そうとう昔の話になるが....。)
大学卒業で国文学の論文を書くにあたり、鷗外=森林太郎について、小さい頃の事やらいろいろ調べ始めた。
そうすると、彼は本当にとんでもなく優秀な人で、幕末の藩医の家柄である森家一族の期待を一身に受けて育った超エリートと分かった。
10歳からドイツ語を習い始め、東京大学医学部を最年少の19歳で卒業している。
そもそも、この時代の日本のエリートたちの優秀さは半端なものではなかったと、いつだったかテレビの情報番組で見た覚えがある。
小学生時分から過酷な試験をいくつもパスしなければならなかったとか…。
ただ頭が良いとか勉強ができるのではなく、『坂の上の雲』や長州五傑(『長州ファイブ』)などの史実を見れば、自分の命と引き換えにするくらいの物凄い精神的強さを持って、開国したばかりの国の為に働こうとした人たちが明治の日本には相当数いた。
鷗外も、日本の未来を背負うべくドイツへ官費留学する。
ドイツ留学中は、友人や下宿人たちと親しく付き合い、勉強・研究ばかりではなく、舞踏会や宮廷劇場で貴族と交際したり美術鑑賞や観劇したり、それはもうヨーロッパ文化を思う存分に吸収した。
ドレスデン地学協会では、日本について講演したナウマンというドイツ人学者に流暢なドイツ語で論争を挑んで話題になったりしている。
行動がなかなか派手である(笑)。
(これらの事は、英国留学中に神経衰弱で引きこもりになった漱石とよく比較される。)
そんなドイツ留学時代に、鷗外はあるドイツ人女性と恋に落ちた。
この恋愛を題材にして『舞姫』が書かれるわけだが、実際に、帰国した鷗外を追って、たった一人で長い船旅を経て来日したドイツ人女性がいた。
この人が「エリス」である。
鷗外の周りでは、家族はもちろん親戚、友人、軍部の上司までもが「とんでもない事!」と驚いて、結局、彼女をドイツに追い返してしまった。
これから立身出世をするであろう大事な家の跡取り息子に、変な傷をつけてなるものかって感じだったのかなぁ、、。
この事件については、家族の言葉や陸軍関係者の日記・その後の鷗外の小説などから、断片をつなぎ合わせて推理するしかない。
当時の日本において異国の女性との恋愛はスキャンダル・醜聞扱いだったから、周囲はうまく処理して何事もなかったことにしたかったに違いない。
***Part3に続く***
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