夏の日の想い出

日曜日の夕暮れ時、レッスンの仕事帰りに電車に乗ると、車内は一日遊び疲れた親子連れやデート帰りで仲良く話し込むカップル、登山の格好をしたおばさんグループなんかで、平日の夜とはどこか違う和やかでほのぼのした空気が流れている。

今日、ぼっと席に座ってそんな空気に浸っていたら、ずっと遠い昔の出来事がふと頭に浮かんで一人思い出し笑いをした。


あれは、眩しいくらいよく晴れた夏の日のお昼過ぎ、私は男友達と電車に乗っていた。

世間は夏休みで、車内には今日と同じように行楽の家族連れが何組かいたが、通路の向かい側に座った母娘の娘の方がしげしげと私の友達を見ている。

小学2、3年だろうか、利発そうなその女の子に見られているのに気がついて彼が見返すと、その子は大きくはないがはっきりした声で彼に聞いた。

「お兄ちゃん、男?女?」

あまりに意外な質問だったので一瞬あっけにとられたがすぐに、ああ、彼女は私の男友達の外見について言っているのだと理解した。

彼はロックミュージシャンで、髪を肩まで伸ばしてそれなりに目立つ風貌だったから、女の子は思わず声を掛けたくなったのかしら、お年頃ね、、なんて思って彼の方を見ると、

「お兄ちゃんって言うんだから男に決まってるでしょ!」

と、かなりご機嫌を損ねている。

私は吹き出しそうになったが、女の子は構わず真剣な顔だ。

「お兄ちゃん、なんで髪の毛切らんと?お家の側に床屋さんがなかと?」

(^^;; うろ覚えだからヘンテコ博多弁....。) 

とにかく、この博多から来たであろう彼女は、目の前の、男の癖に髪を長く伸ばしてお洒落な格好をした男に一言意見してやろうと思ったに違いない。

慌てた母親に黙らされたが、彼は憮然としているし、私は笑っちゃいけないとヒクヒク堪(こら)えた。

常日頃、女性たちから憧れの眼差しで見つめられるのに慣れている男友達のその時の心中を察しない訳ではなかったが、小学生の女の子に言われた事で慰めるのもかえって失礼かと思い放っておいた。

 

あれから◯十年、彼は立派なミュージシャンになっただろうか?

あの女の子は、武田鉄矢のお母さんみたいな肝っ玉母さんになったのだろうか?

因みに、偶然にもその男友達は博多の生まれだった。

よりによって、生まれ故郷の博多弁で意見されたというのは運命的というか致命的というか、今思えばちょっとでも慰めてあげれば良かった、、(-_-;;)。

 

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コメント: 2
  • #1

    yuko (土曜日, 31 1月 2015 19:10)

    最後に吹き出してしまいました。ちなみに博多弁は書かれたままでOKでーす(学生時代福岡にいました)。

  • #2

    michiko (土曜日, 31 1月 2015 19:23)

    yukoさん、そういえば九州女子だったんですよね。柚子胡椒は衝撃の初体験でした、、。(今は大ファン^ ^)
    またイズイズと一緒に女子会、やりたいです〜。