前髪

私の周りには、お洒落で美的センスのある人が男女を問わずかなり多い。

さらに、遠慮無く自分の意見を言う傾向にある人も同じように多いから、彼らが私を見るとどうしたものか、何か一言言ってやりたくなるらしい。

 

「田崎はさぁ、その洋服と髪型って、ほんといかがなものよ。」

「みっちゃんはその頭、ひっつめてないでもっとふわっとさぁ、、。」

「田崎さんて、何十年もその髪型なんじゃないんスかぁ?」

「あなたね、髪型とか何とかしなさいよ。」

 

今、思い出しただけでも随分と言われ放題な感じだが、自分でもマジで『ごもっとも!』なんて思ってしまうからしょうがない。

問題はやっぱ髪型みたいだな、、。

 

20代の頃から通っている美容院では、もう聞き飽きるほど言われている。

「田崎さんは、もうちょっと頑張るといろいろ出来るんだけどねぇ、、。」

”もうちょっと頑張る”というのは、夜寝る前にカーラーで髪をくるくる巻くとか、朝起きたらドライヤーとヘアーブラシでブローするとか、毎月美容院にちゃんと通うとか、ヘアーアイロンを使えるようになるとか、まぁそんな事なんだけれど、これがなかなか”頑張る”気になれない。

私の無精とお洒落センスの無さを熟知している数十年来仲良しの美容師さんが、

「前髪、ちょっと切ってみる?」と言ったので、

「うん、やってみる.....。」私的にもの凄い決心をして、ほんのちょっとだけど前髪を切ってもらった。

アシスタントの若い美容師さんが、

「わぁ、すっごい変わりましたよ!!違う人みたい!」

「ほんと?そっかなぁ、、。ふ~ん、そう?、、。やったぁ~、わたし変わったよね!」

 

久しぶりに美的な努力をしたという充実感にめちゃめちゃ満足して帰宅した。

家の洗面所でまじっと鏡を覗き込みながら、美容師さんに教わったとおりに前髪を横分けにしたり、ふわっとさせたり上にあげてみたりした。

「ふむ、なるほど、、。」

みんな、今に見ておれってな気分になった。

 

あれから1週間。

お盆という事もあって、めちゃめちゃ沢山の知人たちに会った。

なのに、誰も”前髪”の事を言わないのは一体ど~した事なんだろうか ??

一人悶々としていたら、ようやく今日、ソニドのママに言われた。

「あなた今日、なんか顔が違うんじゃない?」

「( やった!) そうそう、前髪をね、切ったせいなんですよ^ ^ 」

得々と私が言うのをママは軽く聞き流して、

「メーク、変えたんでしょう?良いわよ、なかなか。いつもより可愛く見えるんじゃない?」

「だから~、前髪切ったんですよ、わたし.....。」

「前髪?そうなの?、、でもメークのせいよ、絶対!」

「......。」

 

まぁ前よりはちょっと良く見えるみたいだから、細かい事はこの際いいか、、。

しかし、1週間前のあの感動は何だったんだろうなぁ。

微妙に残念な今日この頃ではある。