懐かしい匂い

東京に滞在中、モスバーガーに入って熱い生姜入りスープを飲んでいたら、店内にビートルズのホワイト・アルバムが流れ始めた。

口の中は強烈な生姜の香りでいっぱいなのに、体の中の何処か別の場所で、なんともいえない独特で懐かしい匂いがした。

ん、なんだ、この匂いは?

そ~だ....、町のレコード屋さんでアルバムを買ってきて、ワクワクしながら白い薄セロファンの袋からレコード盤を取り出した時の、化学実験室みたいなあの匂いだ!

ホワイトアルバムは、ビートルズのアルバムの中でも一番のお気に入りで、部屋に籠って「I am the walrus~!」なんて叫んでいた頃の記憶がぱぁっと蘇った。

あの頃は毎日ビートルズのアルバムを聴いていて、その後はディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、ELP、YES、、と順当にハードロック、プログレッシブロックへの道を進み()、ステレオの音量もどんどんガンガンギャンギャン上がっていった。でも親から怒られた事は一度もなかったなぁ....。

ただ、当時は郊外に引越したばかりで、近所の人たちはみんな「田崎さんちの息子さん」と思っていたらしい。ロックなんて聞くのは、髪の毛を伸ばした変わり者の男子だけだという偏見が田舎にはあった訳で、、()

 

懐かしい記憶に浸りながら、それにしても面白い思い出し方をしたなぁと思った。

音楽をきっかけに、あの独特な匂いがどういうのかふっと香ったような気がして、次々とレコードにまつわる思い出が表に出てきた。

そう考えると、記憶というのは様々な感覚の複合体であるのだろうが、その一つひとつはかなり独立していて、アクセスの具合でかなり面白い事が起こるんじゃないだろうか?

例えば、海に沈む夕陽を見ていたらイカ焼きの味が口の中に広がるとか、、。

そして、なんでかいな?と不思議に思うと、昔小さい頃に、父と海辺の砂浜に並んで座って、イカ焼きを食べながら日本海に沈む夕陽を見た事を思い出すのだ。

 

まぁ期待し過ぎちゃうとサプライズは起きないから、気長に次の機会を待つかな、記憶の連鎖反応は思わぬ時に起きるかも、、。