シンセな日々

先日、テレビを見ていたらインタビュー番組に大江千里さんが出ていた。

47歳で突然、日本での音楽活動を休止してニューヨークに渡り、4年間Jazzを勉強したそうだ。

大江さんのキャリアとは比ぶべくもないが、私も8年前に突然、「Jazzをやる~!」と叫んで仕事道具のシンセサイザーほとんど全部を売り払った。

それまでは、仲間と毎週セッションするぐらいでちゃんとしたJazzピアノを弾けた訳でもないのに、まぁ今考えれば無謀だったというか、甘かったというか....(笑)。

 

私はいろんな事を同時にやれる器用なタイプではなくて、これ!と思うとそれだけしか目に入らなくなる。

Jazzの前はかなり長い間、シンセサイザーに夢中だった。

 

<YAMAHA CS10>

1977年発売.。モノフォニックのアナログ・シンセサイザー。

YAMAHA新潟センターの録音スタジオの片隅に何台も並んでいて、White Noiseで北風のヒュー音とかピュー音とかビュー音とか(笑)作って遊んでいた。

単音しか出ないから、YMOのコピーバンドをやろうとして和音を出すのに3人(=3台)必要だった(笑)。

  

<KORG Poly6>

記念すべき人生最初に購入したシンセサイザー。もうこの頃はポリフォニックで、音色のプリセットも出来た。

一緒にRolandのデジタル・ディレイも買ってバンドした。

 

<YAMAHA DX7>

FM音源という、それまでのアナログシンセとは全く違う音作りのデジタル・シンセサイザー。1983年に規格が発表されたMIDIがいち早く装備され、デジタル・シークエンサー(QX1)もその後すぐに登場した。

分厚い取扱説明書とMIDIハンドブックとDX7・QX1相手に、ああでもないこうでもないと日々悪戦苦闘した。

その甲斐あって、音作りが難しかったDXの音色作成の仕事が来るようになった。

 

その後は、エフェクターとかサンプラーとか音源モジュールとか高額なシンセもじゃんじゃん増えていって、幸運なことにバックバンドの仕事をもらえてアレンジもいろいろやった。

鍵盤の練習はちっともしなかったけれど、大好きなストリングスの音色でいかにオリジナリティを出すか、サウンドの厚みを出すか、いろいろ試してみて、本番で大きなホールに自分の音が響くと本当に嬉しくてワクワクした。

スタジオでリハーサル中です。
スタジオでリハーサル中です。

部屋にこもって何台ものシンセサイザーと過ごした私の”シンセな日々”は、とてもじゃないが妙齢の女子が送る日々ではなかったけれど、お洒落とか海外旅行とか結婚とか女の子らしい事にまるで興味がなかったのだから、まぁそれはそれで良し、、か?(笑)。

コンピューターに数値を打ち込んで音楽を作るDTMの仕事が殺人的に忙しくなった頃、思い切り鍵盤を弾きたい、本当の音楽をやりたいという気持ちがどんどん強くなって、次第にシンセサイザーから気持ちが離れていった。

 

家にあったシンセサイザーほとんど全てを秋葉原の中古楽器店に運び込んだ時、不思議となんの感慨もなかった。Jazzをやるんだというめちゃきっぱりさっぱりした気持ちだけだった。

それなのについこの間、引っ越し荷物の中からこの時のシンセ買い取り査定の書類が出て来て、思わず一つ一つ目を通した。

何故だろう、胸がしめつけられるように苦しくなった。

懐かしいというのでなく、何か罪悪感に似た痛い想いで査定書をそれ以上見れなくなった。

私の”シンセな日々”がそこにあって、記憶の底に沈めてしまった私自身の姿にいきなり出会ってショックを受けた、という事だったかもしれない。淋しさだったかもしれない。

その想いが一体何だったのか、今でも言葉がみつからないでいる。

 

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コメント: 6
  • #1

    クワジ (木曜日, 12 9月 2013 18:44)

    私にとっても懐かしい楽器の数々です。
    素敵な文章をありがとうございました。

    楽器の性能の進歩と“思い切り鍵盤を弾きたい、本当の音楽をやりたい”という気持ちが反比例して行くところは、なんだか時代の持つ残酷さを感じます。

    最後の買い取り査定の書類を見たときの気持ちは、読んでいてこちらまで切なくなりました。

  • #2

    michiko (金曜日, 13 9月 2013 15:47)

    わ、クワジさん、本当にお久しぶりです^^
    ブログ、読んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます!
    シンセ・ソロを弾くクワジさんのかっこいい姿が今でも目に浮かびます。劇団の音楽とか、懐かしいですね。
    多重録音も楽しかったなぁ....。
    ProToolsあたりからついて行けなくなりました、最初は財政的に、次は知能指数的に(笑)。

  • #3

    クワジ (金曜日, 13 9月 2013 20:13)

    わ、覚えて頂けてたんですね、とても光栄です!

    美知子さんが新潟を離れられてからの活躍は、様々なメディアで見るに付け勝手に誇らしく思っていました。
    ブログは時々読ませていただいています。
    どの文章も、美知子さんの感性を感じる素敵なブログです。

    今回の“シンセは日々”は間接的に、シンセへの愛情たっぷりの文章です。
    FBで新潟鍵盤研究所っていうグループをやっています。
    https://www.facebook.com/groups/548090198587973/
    ほとんどがアマチュアの鍵盤奏者なので、ぜひ読ませたいと思います。
    紹介してよろしいでしょうか?

  • #4

    michiko (土曜日, 14 9月 2013 06:30)

    こちらこそ、どうぞ宜しくお願いします!

  • #5

    sekstelefon (金曜日, 03 11月 2017 22:39)

    Szkucin

  • #6

    sprawdź wróżkę (土曜日, 18 11月 2017 00:26)

    bałucki