新潟の家にはささやかながら前庭と中庭がある。
鉢植えでもらった苗木や、近くから飛んで来た種から芽を出した木々なんかを父が植え替えて、一応、庭っぽくなっている。
手入れといっても、雑草を抜いたり肥料を時折まくぐらいで、基本は"自然に任せる(笑)"なので、椿は見上げるような巨木になり、梅の木は「ホントに梅か、、」と疑うくらい葉っぱが繁茂している。
サツキとツツジは去年の猛暑と水不足で死にかけて心配したが、今春、寒々しい枯れ枝の奥から濃緑の若葉がのぞいた。
唯一、庭木らしい端正な姿を保っているのは、中庭の真ん中の山法師だ。
一昨年、近所の方の紹介で我が家で初めて庭師さんが来て植えてくれた。春には可愛らしい白い花が咲く。
早朝や夕暮れ時に庭に出て、枯葉を拾ったり雑草をむしったりしていると、葉っぱをむしゃむしゃ食べている青虫や列をなして地面を進む蟻たち、カマキリの白い卵や名前も知らない小さな昆虫たちに出会う。ついでに蚊にも食われる(笑)。
先日、家の土台のコンクリートの上を、綺麗なコバルトブルーと銀色の混じったカナヘビが忙しそうに走って行った。カナヘビは砂地に生息する小さなトカゲだ。
私が小さい頃に住んでいた家は、今の家より町中にあったが敷地が同じような砂地だった。
ある日、学校から帰ると、玄関から離れた前庭みたいな場所に母が所在無げに立っている。いつも元気な母が妙に頼りない感じなのでどうしたんだろうと思って近寄っていくと、声をひそめて「家の中にカナヘビがいる。」と言う。
わっ、カナヘビか、、。
結局、父が会社から帰ってくるまで二人でぼっと待っていた。
帰宅した父はすっと家に入っていって、手の中にカナヘビをつかんで出てきた。面白がって母に見せるもんだから、キャーキャー母が悲鳴をあげて、いつもは怒られてばかりで恐ろしげな母が何とも可愛く見えた(笑)。
こんな遠い昔の出来事をぼんやり思い出していたら、ハッと大変な事に気付いた。
もう、父はいないのだ。
カナヘビが家の中に入ってきたら誰が退治するんだ?
ん~、あのヌメヌメした生き物をつかむ勇気はどうやったってない。
もしかしておっきな蜘蛛とかゲジゲジとか青大将に遭遇したりして....(大汗)。
女二人、こういう状況に対して完全に無力だ、、。
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