ホラー映画

『エクソシスト』は部屋をまっくらにして一人で見た。昔の映画だけど、何回見ても相当怖い。

『シャイニング』はタイプライターの不気味な文字で総毛立った。それにしてもさすがキューブリック、映像が息をのむほど美しい。

『リング』はいつも通り部屋をまっくらにして一人で見ていて、最後のショッキング場面で思わず立ち上がって絶叫した。「ひぇ~!!」

 

他にも『オーメン』とか『呪怨』とか、大好きな(笑)ホラー映画がたくさんある。

CGを使った怖い映像がたくさん出てくるとか、ストーリーが想像を絶するほど悪魔的だとかじゃなくて、独特の雰囲気とリアルさでじわじわと背筋が寒くなる感じが好きだ。

 

無機質で陰鬱なタイトルテーマの音楽が、非日常的で本能的な意識下の不安を呼び覚ます。

張りつめた空気に徐々に息苦しくなり、もの凄く良くない事がこれから起きるのだ....という緊張感が画面からどんどん押し寄せてきて、その迫力にまさにのけぞりそうになるその瞬間、信じられないほど恐ろしい事件が起きて「わーっ」と叫んで後ろにひっくり返る....。ま、それが理想のホラー映画だ。

 

お化け屋敷と違うのは、そのびっくりする瞬間までの緊張感の綿密な構築だ。

映画製作技術の力量ー監督のバランス感覚やセンス・テンポ感、脚本や俳優のレベル、映像・編集の技量が如実に出る。

感動的なラストが用意されている訳ではないから、というかだいたいラストは絶望的なので、映画全編にわたって一つ一つのシーンが勝負になる。それぞれのシーンの積み重ねが傑作か駄作かを決定する。予算をいくらつぎ込んでも、緊張感が途切れてしまったホラー映画はB級だ。

 

リアルさと言えば、怖いからと言って、登場人物がキャーキャー叫んでいるばかりじゃやっぱりお化け屋敷だ。

人間、本当に怖い時って足がすくんで声なんか出ない。

まして得体の知れない未知のもの、幽霊とか悪魔とか悪霊とか、人生で絶対かかわり合いになりたくない”もの”と対峙している時の人間はいったいどういう反応をするだろうか。

宗教心や科学的な思考、倫理観が根源的な恐怖とせめぎあうはずだ。あるいは愛する人を守ろうと絶望的な闘いを決意するかもしれない。

そこまでの精神的な葛藤を脚本なり演技で表現できた映画は、後世に残る名画になる。

メジャーな大作が好きな映画評論家は見向きもしないかもしれない。

でも優れたホラー映画は、トム・ハンクスやメグ・ライアン主演の大ヒットお手軽恋愛映画より数百倍、人間の心の深淵に迫る。

 

私たちファンはそんな名作を心待ちにしている。

最近の薄っぺらいB級ホラー映画を見る度に「なんだよ~」と涙にくれながら、レンタルビデオ屋さんの片隅の小さなホラーコーナーで、埋もれた名作を日々探すのだ(笑)。