オリジナル3

数年前に杉並区に引っ越してきたのだが、その前は中央線国立市に住んでいた。

線路に近いマンションだったが、近くを通る電車の音が遠くかすかに聞こえるほど防音がしっかりしていて、夜は一人でいると寂しくなっちゃうくらい静かだった。

 

PC相手の打ち込み仕事に疲れると、晴れた晩はベランダに出てワイン片手にずっと夜空を眺めていた。

こう書くとものすごくロマンチックな感じだけど、実は、UFO▲をなんとか一目見たくて、人知れずかなり真剣に観察を続けていた(笑)。

我ながらまぁ何というかあれなのだが、当時は、国立市といえば近くに自衛隊の施設もあるし、都内よりUFO出没の可能性はずっと高いはず!とめちゃめちゃワクワクしながら夜空を見ていた。( UFOと自衛隊がなんで関係あると思ったのか謎...米軍基地なら分かるけど。)

 

その日は台風が近づいていて、いつもより雲が多く風も強かった。秋口だったと思う。

星も月も見えなかったので、今日は駄目だなと諦めて部屋に戻ろうとしたが、湿気を含んだ風が妙に気持ち良かったのでしばらくベランダの手すりにもたれて空を見上げていた。

夜空を覆うたくさんの雲が、強風に流されてかなり速いスピードで切れ切れに走っていく。雲間にところどころ、ぽっかりあいた小さな穴のように暗い空色がのぞいていて、まるで疾走する雲と併走しているみたいに見える。

そのうち、何だか妙な感じがした。

暗い空色とたくさんの雲と、もう一つ、別のスピードで同方向に移動している何かがあるような....。巨大な何かか無数の何かか、目をこらしても雲に遮られてよく分からない。

戦闘機の大編隊か巨大なUFO▲か! ここにいるのが私だけという事実にがっくりしつつ、でもそのうち、さっきから3分間くらいずっと見ているのに、上空の状況がさっぱり変わらないってのは変だよね?とも思えてきて、結局、目の錯覚かぁと諦めきれない無念さをねじ伏せるように観察を断念した。

翌日、Jazz仲間たちに身振り手振り交えて切々と報告した訳だが、ははっ!またぁ~、なんて案の定、軽く流されてさっさと”終了”されてしまった(涙)。

 

えらく前置きが長くなってしまったが、私のオリジナル3 「Purple Moon(紫の月)」は、そういう『UFO・苦難の観察時代(笑)』にできた曲だ。

 

夜空に日々姿を変えて現れる月は、ある時は冷ややかに、ある時は情け深く暖かに、傲慢さをひた隠し清楚な謙虚さを装って、この世とは隔絶した美しさで私たちを魅了する。

それはまるで、luna(月)の霊気に気がふれてlunatic(精神異常者)となってしまった殺人者や狼男を秘かに嘲笑うかのようだ。

月を見ていると何かおかしくなる....、そう言うなら、UFOを夜な夜な探す方がよっぽど怪しげだと思うが、月が紫色に見えちゃう前にUFO探索に飽きてしまった私は、危ういところで事なきを得たのかもしれない(笑)!

 

それにしても、一度くらい正真正銘のUFOをこの目で見たいと今でもほんの少し未練はある。

でももし、本物のUFO▲が杉並区に出現したなら、「どうして杉並区?」と逆に宇宙人に聞いてみたい気もする....。